4~6月のGDP速報値で相場が動かなかった理由
発表されたGDPの値を検証
こんにちは、マーケットの魔術師 奥村尚です。
8月18日(月)内閣府がGDPの4-6月期(2Q)の一次速報を出しました。
結果は、前期(1-3月期,1Q)比 -7.8%で、
3四半期マイナス。
年率換算 -27.8%で、戦後最悪というニュースでした。
この日、日経平均は、100円安からスタートし、
192.6円安で引けました。
「あれ?」と思った人は多かったのではないでしょうか?
戦後最悪ということは、戦後75年間で最悪の成長率だった
ということを示しています。
200円安程度であれば、毎日のように起こる小さな下落です。
75年ぶりの悪い数字となると、
普通に考えると、日経平均がもっともっと大きく、
例えば1500円くらい安くなってもよいはずですね?
これが、相場の織り込みというやつです。
今回は、この織り込みとデータの見方を掘り下げてみます。
まず、相場はショックに弱いのですが、
ある程度覚悟しているときには、その通りに悪い情報が出てきても、
耐えしのぐとされています。
織り込みというのはその事を指します。
今回でいうと、4~6月期(2Q)は、
今年の4つある四半期の中では最悪の数字であろう
ということは最初から分かっていました。
4-6月期としては、欧米はすでに発表しているところも多かったので、
数値水準もだいたい分かっていました。
例えば、欧州は前期比で
フランス -13.8%
ドイツ -10.1%
イタリア -12.4%
スペイン -18.5%
英国は -20.4%
でした。
米国に至っては4-6月期前年比-40%超えです。
と、ここまで書いて、「フンフン、なるほど」
と考えてしまったとしたら、
あなたは騙されやすい人です。
ダマシを隠して入れ込んでおいたのです。
まず、少しデータの読み方を復習しておきます。
実は、ニュースされた日本のGDP成長率 -27.8% というのは、
4-6月期の悪い成長が3Qも4Qも続いた場合の、
年末における年間換算での1年の成長率予想です。
GDP成長率は、1年を3カ月ごとに区切って、
1-3月期(1Q)、4-6月期(2Q)、7-9月期(3Q)、10-12月期(4Q)と
4つの四半期(Q、クォータ)に分けます。
今回は、4-6月期(2Q)の発表でしたが、
1-3月期(1Q)に比べると-7.8%悪化した、ということであり、
4-6月期だけを考えると、1-3月期より-7.8%になったにすぎません。
欧州は、全て1Qと比べた数字ですので、
日本より影響は大きいことがわかります。
これに対し米国の書き方は、2020年1-3月期ではなく、1年前の同じ時期つまり、
2019年の4-6月期に比べて-40%超悪化したと書いています。
前期比(2020年1Q)比では、-32.9%でした。
マスコミは、なるべく大きな数字になるような表現をあえてすることで
タイトルで注目させようと企んでいるわけです。
なお、GDPには、名目と実質の2種類あり、
特に断りがない限り、実質GDPを使います。
両者の違いは、名目は、物価が上昇しても、
値上がりした分の価格をGDPに入れ込みます。
実質GDPは、物価が上昇した分を除去して、
実質増えた付加価値分を計算し入れ込みます。
例えば、卵が昨年まで200円、今年は300円に値上がりしたとして、
年間1万個の卵を売ったとすると、
昨年のGDPは名目も実質も、200×1万=200万円です。
しかし、今年のGDPは、名目GDP300万円で、
実質GDPは値上がりした100円の影響を除去するので200万円となります。
名目GDPを、実質GDPで割ったものをGDPデフレーターといいます。
卵の例では、 300 ÷ 200= 1.5 と計算されます。
これが1より大きいとインフレ、
1より低い数字になると、デフレを意味します。
今回の内閣府発表の実質GDPと名目GDPの成長のグラフを参考までにどうぞ。
最後に、少しだけ安心できる情報をお教えします。
ダマシではありません。
7-9月期(3Q)の発表はずっと先ですが、前期比2桁のプラス成長が予想されています。
日本の2020年通期のGDPは、前年比 -5.5%から-6.0% 程度で着地する
という予想になっています。
このブログではみなさんの資産運用のお役に立てる情報として、
金融、為替(FX)関連のマーケット動向や予測なども随時配信していきますので
次回の記事もご期待下さいね。
では、また次回をお楽しみに!
マーケットの魔術師 奥村尚
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