株価を支える日銀と投資家の動き
日銀が日本の株価を落ち着かせている
こんにちは、マーケットの魔術師 奥村尚です。
3月に入って、日本株はNYの影響を大きく受けながらも、
案外新型コロナの影響を一定の形で制御しており、
そのため、大きく被害を広げている欧米よりも、
日本の株式市場は落ち着いた対応になっているように感じます。
日本はコロナ感染者は増加していますが、その数の伸び率は減少しており、
危機は去ってゆくように見えたからだと思います。
日本のコロナ感染者(累計)はどう増えてきたか、
伸び率はどう減少したか、見てみましょう。
感染者数は累計なので、当然に増えます。
問題は伸び率であり、これがゼロになると、
感染者数の累計は増えもしない、減りもしないことになります。
これをみると、確かに赤い線で示した伸び率は減っています。
ただし、3月27日以降は増える伸び率は増えていて、
3連休の間に感染が広がったことを示唆する傾向もみせていますね。
心配含みですが、現時点ではなんともデータが少ないので、
一旦置いておくとします。
さて、冒頭では、日本の株式市場は落ち着いた対応になっている、
と書きましたが、その部分を見える化しておきましょう。
以下のグラフは3月に入ってからの、日米株価の比較です。
3月の第一営業日を100として指数化しています。
よく見ると日米で異なった反応になっていることは明白です。
おおざっぱには、下落しているという点では似ていますが、
米国はカクカクしていますが、日本はなめらかに下落しています。
これは、日本の方がリスクが小さいことを示します。
(ちなみにリスクを数値で示すと、
この3月の日本株式のリスクは3.85%、米国のリスクは6.74%です。
言い換えると、日本株式市場のリスクは、米国の57%であり、
43%もリスクは少ないのです。)
たとえば、3月18日は、
その前日のNYダウは1,300ドル以上も下げ(-6.3%)たのですが、
日本はプラスで引けました。
日本のリスクを下げているのは、この違いです。
なぜこうなったかというと、誰かが買っているということでしょう。
それは誰か?
われらが救世主、日銀(日本銀行)です。
日銀は、当初予定していた3月18-19日の金融政策決定会議を前倒しし、
16日に開催し、その日にETF購入資金の増額を発表しました。
実際には、手続きが必要で、財務大臣と金融庁長官にETF買い入れの実施に対し、
認可を申請し、翌日に認可が下りています(日銀HPでの発表は18日)。
その最初の買い入れが、19日でした。
いきなり2016億円の買い。
19日の東証1部の売買代金は 4.6兆円なので、全体の4.3%ではありますが、
日銀の買いは、ニュースバリューも大きく、
市場に対してインパクトがあるので、前日のNYの下げを吹き飛ばす程だったのです。
NYが -6.3%の大暴落の翌日(3月18日)、日本がプラスで終わったのは、
日銀に右ならえのサポーターも大きく関与していたのは言うまでもないでしょう。
NYダウが900ドル以上下げて終わった20(金)の翌営業日、
23(月)の東京市場は、またしてもプラスで引けました。
しかも、NK225は330円以上上がりました。
この日の、日銀は2016億円の買い入れを行ったためです。
それを見た投資家は、当然に、右へならえ、と同じ動きをします。
3/23の株式指数先物は、日経平均も、TOPIXも、一気に買い越しに転じています。
これは、機関投資家の手口です。
少し遅れて、翌日、”日経2倍レバレッジ型投信”が
売買代金の上では最も売れた証券です。
これは個人投資家の手口です。
そして、以下の売買代金の伸びをみてください。
異様に伸びています。
恐らく、これは年金の買い、によるものです。
(難しいことをいうと、年金の買いは、
アセットアロケーション上のポジションの最適化調整なのですが、
ここでは触れません)
みな、日銀を参考に投資しているのです。
ここぞという時に出てくる日銀の買いは、日銀としても理由があります。
簿価19,500円といわれるETFの保有残の、評価損を極力抑えたいのです。
19,500円になるまで、3月は日銀は力いっぱい、
ETFを買いつつけることでしょう。
「中央銀行には逆らうな」ということわざは、
当ブログでも何度が引用していますが、この3月は、特にそう感じました。
このブログではみなさんの資産運用のお役に立てる情報として、
金融、為替(FX)関連のマーケット動向や予測なども随時配信していきますので
次回の記事もご期待下さいね。
では、また次回をお楽しみに!
マーケットの魔術師 奥村尚
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