多くのFX会社が倒産したのは信託保全が原因
100%資産が守られる信託保全
こんにちは、マーケットの魔術師 奥村尚です。
以前の記事で、2005年の金融先物取引法の改正により
「お客様の資産と会社の資産は、
明確に分離して管理しなければならなった」
という点に触れたと思います。
もし、まだ見られていない方はこちらからご覧ください。
お客様の資産と会社の資産は分離する。
これは当たり前のようなことですが、逆に言うと
それまでは、お客様の資産を会社の経費として使う事も
普通に行われていたという事になります。
恐ろしいですね…
この法改正により、悪徳業者が激減したことも確かですが、
分別管理を義務付けたところで、業社が倒産した場合などは、
必ずしも、100%お客様の資産が守られている訳ではありません。
そこで、2009年の内閣府令改正により
FX業社に信託保全が義務づけられました。
信託保全とは、FXのお客様の投資資金を信託銀行に託すことにより、
万が一FX業者が倒産などをしても、
投資資金が信託銀行を通じて返却される仕組みです。
「お客様が入金した投資資金は、
”100%”信託銀行に預けなければならない」
という完全信託が義務づけられました。
FX業者は、これを日々当局に報告しなければなりません。
2005年の金融先物取引法の法改正の後、
分別管理をしっかり行っていたならば何の問題はないのでは?
と思うかもしれません。
確かに、きっちり分別管理を行っていれば、
お客様に迷惑をかける事はありませんでした。
しかし、完全信託保全の義務化は、
多くのFX業社にとっては生き死にに関わる重大な問題でした。
FX業者は、お客様からの注文を、原則「カバー先」につなぎます。
カバー先とは、主にインターバンクで取引を行っている
世界的なメガバンクとなります。
個人が直接メガバンクに注文を出すことは出来ませんので、
FX業者がその仲介役となります。
その仲介役となるFX業者は、メガバンクに注文をつなぐためには
一定の保証金(担保)を入れなければなりません。
これまでは、お客様から預かった証拠金の一部を担保として
メガバンクに預けていましたが、完全信託保全により
FX業社の”自己資金”で入れなくてはならなくなりました。
例えば、お客様からトータルで50億円預かっている業社は、
ざっくり15億~20億円の資金をカバー先に入れなければなりません。
急に20億円もの資金を簡単に調達できる業社は、
当時ほとんどありませんでした。
資金力のないFX業者にとっては、ひとたまりもない状況です。
その結果、バックに資金力がある業社が生き残る
という事態になってしまいました。
健全に経営を行っていても、資金力がない業者は淘汰された
というわけなのです。
しかし、一方で、この完全信託の義務化により、
業者が破綻しても、信託銀行が破綻しても、
お客様の資産が100%保全されるわけですので
お客様にとっては神のようなルールです。
ただし、完全信託の義務化は日本業者のみで、
海外業者には適応されません。
最近は海外業者で取引をする方も多いようですが、
100%の信託保全ではありません。
海外の免許業社は分別管理は義務付けられており、
中には「一部信託保全」という業者もあるようですが、
日本ほど顧客の立場に立っている業者はないでしょう。
そればかりか、海外は無登録業者が多く、
そのうち9割以上は悪徳業者と言われています。
突然連絡が取れなくなり、資金が戻らないという話はいまだにあります。
”日本のFX取引は規制が多い”と投資家からは煙たがられていますが、
資産はしっかり守られているという点においては
金商法には感謝すべきでしょう。
次回は、FX業者の実態についてお伝えいたします。
このブログではみなさんの資産運用のお役に立てる情報として、
金融、為替(FX)関連のマーケット動向や予測なども随時配信していきますので
次回の記事もご期待下さいね。
では、また次回をお楽しみに!
マーケットの魔術師 奥村尚
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