3月3日のFRBの緊急利下げについて

 

 

織り込み済みだったFRBの緊急利下げ

 

こんにちは、マーケットの魔術師 奥村尚です。

 

この2週間というもの、
株式は米国を中心に世界的な下落が続き、
ドル安が進んだわけですが…

 

その中で金融当局が動き、それを相場が受けとめ、
また相場ではじき返したという事象がありました。

 

 

この期間の話を、少し分解して見ていきましょう。

 

 

ドル円レートNYダウ日経平均の3つ相場の推移を掲載します。

 

 

 

 

 

2月20日以降、2月29日まで、米国は、株式の下落が止まらない状態でした。

 

米国では、NYダウでは過去最大の3,583ドル。
リーマンショック時に相当する暴落になっていました。

 

 

2月29日(土)、中国のPMI指数
(企業の購買担当者が回答する景気の感覚を数字化したもの)が、
リーマン時を下回り、35.7と過去最低となりました。

 

しかし、この日を境に、株式市場の下げは止まっています。

 

 

FRBパウエル議長は、
「コロナウィルスの影響の、規模や期間については不透明で、状況は流動的である」
と述べていますが、これが今の市場心理を象徴しています。

 

市場は、”先が見えない、真っ暗闇である”という状態を、
最も嫌います。

 

暗闇はそれ自体が恐怖であり、
その恐怖が株式市場をゆさぶり暴落を起こし、
金利や為替市場を大きく左右します。

 

その闇の先がある程度見えた29日に、
ひとまず下げが止まったということになるでしょう。

 

 

3月3日、G7電話会議があり、声明文が出されます。

 

それに対する失望で株がさらに下落、ドルも売られました。
その中で、FRBは緊急利下げを行った、という事になります。

 

この時期の中央銀行市場の動きは、
相場を見るうえで非常に重要な要素がてんこ盛りであり、
少し掘り下げて説明しようと思います。

 

 

この状況の中、まずはFRBパウエル議長は緊急声明を発表し、
適切に行動すると述べました。

 

その後、日銀の黒田総裁は談話を発表。

 

ECBのラガルド総裁も声明を発表するなど、
米日欧の中央銀行連携プレーをみせました。

 

しかし、この時期、米国では、利下げは既に市場で織り込まれていました。

 

3月17-18日FOMC
(連邦公開市場委員会、米国債券や金利市場における誘導金利水準の意思決定機関)では
利下げがあるだろうとされていたのです。

 

市場では、0.5%の利下げ期待が90%を超える事を前提とした取引が既に行われており、
だからこそ、2日のNYダウは、8営業ぶりに1293ドルという
過去最大の上げが記録されたわけのです。

 

この時、市場では、利下げの発表タイミングは、3月17-18日のFOMCではなく、
その前、早ければ3日のG7の緊急電話会議の後、もしくは、
12日のECB理事会後の欧米協調の金融緩和発表でした。

 

 

しかし、G7の緊急電話会議のあとの声明は、
適切な政策を取る用意がある、とか、さらなる協調の用意がある、という、
実に教科書の棒読み的な内容に終わったのです。

 

失望があった直後、3月3日にFRBから緊急利下げが出されます。

 

市場の予想通り 0.5%の利下げでした。

 

 

FRBが0.5%もの大きな金利を一気に下げるのは、
リーマンショック時の以来の大盤振る舞いです。

 

本来であれば、市場は驚き、一気に株価を戻す….はずでした。

 

しかし、実際はです。

 

既にその利下げを織り込んで、
なお売られていた米株は、利下げの直後こそ380ドル上昇しましたが、
結局、前日比785ドル安で売られました。

 

 

これをもって、
中央銀行はウィルス拡大の影響には何の役にもたたないとか
まったく取るにたらない政策であった
利下げは空振りした

と一蹴する記事も見受けられました。

 

 

中央銀行は、市場の期待通りの利下げ(あるいは利上げ)を、期待通りに行うと、
まったく市場に対してサプライズを与えられなので、
なるべく意表をついた日や意表をついた大きな(あるいは小さな)利下げを行うことで、
インパクトを効果的に出します。

 

 

今回のFRBは、発表タイミングや利下げレートが期待通りだった点もあって、
インパクトは出せなかったとは思います。

 

そもそも織り込み済みであったのだから、効果もなかった
という見方もできるでしょう。

 

 

しかし、効果がなかったと結論付けるには早すぎるでしょう。
これは転換点になるかもしれないからです。

 

実際、3月4日、5日の株式相場は値を上げてきました。

 

金融当局が完全にはコントロールしきれないのがマーケットですが、
誘導方向だけはしっかり当局はハンドリングできている

という事が言えると思います。

 

 

このブログではみなさんの資産運用のお役に立てる情報として、
金融、為替(FX)関連のマーケット動向や予測なども随時配信していきますので
次回の記事もご期待下さいね。

 

では、また次回をお楽しみに!

 

 

マーケットの魔術師 奥村尚