人間は人工知能に勝つことができるのか?
“〇〇する力”においては、まだ人間に分がある
こんにちは、マーケットの魔術師 奥村尚です。
今日は、人工知能に関しての話題に触れたいと思います。
2017年、グーグルの開発したアルファ碁(AlphaGo)が、
世界トップ棋士と完全勝利(3戦全勝)したという
ニュースが報道され、世界的に大きな話題となりました。
このニュースは、TI業界だけではなく世界中の各分野に衝撃を与えましたので
みなさんの記憶にも新しいかと思います。
その後、人工知能の開発は目覚ましい発展を遂げていますが
アルファ碁(AlphaGo)の成し遂げた偉業は
ここ数年で開発された人工知能の中でも最高の成果といえるでしょう。
さて、なんとなく、人工知能と聞くと、
こうしたニュースは頻繁に伝えられて神格化されていきます。
あるいは、鉄腕アトムとか… 2001年宇宙の旅とか…
あるいはスタートレックやスターウォーズなどに出てくるような、
とてつもない能力をもった権化のような印象もありますが、
実のところ、現段階ではそうでもありません。
あくまで、現段階では
『観察し、考察し、次の手を考える』
という処理を遂行する機械でしかありません。
※私自身も人工知能の研究者でしたし、今でも1980年代の日本の国策プロジェクト
第五世代コンピュータの先生たちと交流があります
「考察する」という点において、
人工知能は大変に優れています。
パターン認識、機械学習といった分野では、既に完成の領域に達していますし、
こと情報処理能力に置いては人間を寄せ付けません。
コンピュータ技術の進化により、CPUやメモリが、
飛躍的に大きな処理をできるようになりました。
この卓越した能力によって、人工知能は碁だけではなく、
将棋やチェスにおいても、プロを凌駕するレベルになったのです。
昔の話ですが、私が小学生だった頃、
地元札幌で冬季オリンピックがありました。
1972年のことです。
この冬季オリンピックでは、当時最高のコンピュータをIBMが提供し、
全選手の成績管理を行ってニュースになったことを思い出しました。
当時の安い物価の中でも、このコンピュータの価格は
何十億円だったと思います。
インテルの創業者、ゴードンムーアが論文で発表したことで有名な
『ムーアの法則』というものがあります。
これは「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という半導体業界の経験則です。
集積回路は1.5年で密度が倍になるということを当てはめると、
40年後の今は、当時の1億倍の能力がある事になります。
つまりは、今やスマホ1台の方が
40年前の最高のコンピュータより処理能力は高いということです。
話を戻しましょう。
考察はコンピュータ処理なので凄いことがわかりました。
しかし、“観察する力”においていえば、人工知能は苦手で
まだ人間に分があります。
では、なぜ人工知能がプロに完勝するのか?というと、
観察するルールが何百年も変わっていないため、
次のステップ(=考察する)に容易に進めるからです。
では、これを相場に戻して考えてみるとどうなるでしょうか。
アナリスト vs 人工知能 どちらが優秀か?
いま、IBMやグーグルをはじめ、世界中の証券会社が
人工知能を使って相場の予想を始めています。
既にそれ(人工知能)をアピールした投資信託会社もたくさんあり、
人工知能で銘柄を発掘し、それに投資するファンドを出しています。
しかし、その成績はイマイチです。
私が知る限り、マネックス証券のカブロボが老舗ですが
残念ながら成績は良くありません。
その理由を考えてみましょう。
まずは、人工知能の処理です。
初期のカブロボは“昔ながらのパターン認識”を用いています。
つまり、『過去の株価の推移』を今に当てはめるものです。
テクニカル指標を計算し、それもつかっていましたが、
これは、チャート分析を行うのと所詮同じことです。
極論、「チャート分析で相場に勝てるかどうか?」ということですね。
たとえばですが、単純に「上がる」「下がる」だけを当てることに限定した場合、
二者択一テストで統計技術を使って本物を見分けることができます。
(自由度1のカイ二乗分布に従い、有意差ありと、無しの判定分布の
5%以内を有意差ありとします)
この程度の人工知能は、猿と同レベルの勝率しか稼げないことがわかっています。
成績がイマイチだったのは当然の結果ですね。
本来の予想は、単純に「上がる」「下がる」だけではなく、
『どのくらいまで上げるか、いつまでに上げるか』
という情報も伴うので、相場予想には全く無力だったわけです。
ところが、最近は、いろいろな方法がでてきています。
ビッグデータを使ったり、統計データを使った
相場予想を行える人工知能も出ています。
しかし、ビッグデータを使う手法は、あまり成果が上がっていないのが現状ですが
統計データを使う手法は、結構な成果があがりつつあります。
あるメガバンクが試作した人工知能は、
統計データ(200種類の経済指標)をみて相場を予想するもので、
43カ月間の平均的中率は約70%だそうです。これは結構なものです。
ファンダメンタル分析をするのと同じことですね。
いくら、人工知能とはいえ、開発者がテクニカルを使うか、
ファンダメンタルを使うかで、成果が真っ二つにわかれています。
今最も注目されているのは、
『人工知能自身が自分を評価し、何が問題かを考え、それを改善する学習機能』
いわゆる、ディープラーニングです。
ディープラーニング(何が問題かを考える機能)もまだまだ研究段階。
統計データのどの情報を与えるかは、まだ、あらかじめ人が決めているのですが
この研究が進むと、いずれ人工知能自身が
より有用な情報を探しだし、その解析方法も編み出し、
それを予想アルゴリズムに自分で適用するシステムになってゆくでしょう。
ここまで来ると、その辺の並みのアナリスト程度では
寄せ付けない確度になっているように思います。
こうした技術は極めて進歩が早いので、
時間がたてばたつほど予想精度をあげてくるでしょう。
実用には20年かかると思いますが、
世界がこぞって研究開発を進めている分野であり、
大きな期待がされています。
その頃には、もしかすると世界最高のプロアナリストをも
人工知能が凌駕する時代が本当にくるかもしれません。
このブログではみなさんの資産運用のお役に立てる情報として、
金融、為替(FX)関連のマーケット動向や予測なども随時配信していきますので
次回の記事もご期待下さいね。
では、また次回をお楽しみに!
マーケットの魔術師 奥村尚
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