手を動かして問題解決能力を向上させる

電気代をもとに推測してみる

 

こんにちは、マーケットの魔術師 奥村尚です。

 

今回は、相場とは直接関係ない内容ですが、相場観を養う為の、
あるいは、色々な問題を自己で解決する為の、
いくつかの観点をお伝えしたい
と思います。

 

物価に関する話をサンプルとして進めてみます。

 

昨年以来、いろいろなモノやサービス価格が上昇してきましたね。

 

物価を見る場合は、物価そのものではなく、1年間の上昇率を主に見ます。
正確には、前年同期比で比べ(これを物価上昇率として定義して)、
その比をみます。

 

要するに今年の月と前年の同じ月の物価の比率を比べ、国際比較するのですが、
過去にもCPIの伸び率の話をしていますね。

 

今回は物価全体ではなく、ミクロな要素を対象にします。

 

電気です。

 

電気料金もズンズン上昇していますね。

 

先月も、この5年間で最も高い、とニュースされました。

 

ここで、おやっ、と思いませんか?

 

ということは、5年前は同じくらい高かったのかな、と。

 

僕はこれを数字で理解したくなる性格なので、もう少し調べてみました。

 

資源エネルギー庁のHPで調べてみると、どうやら2011年の東日本大震災
原発がほぼ停止してからは、しばらく電気代は上がりつづけ、
1kWh当たりの平均単価は2014年にピークをつけたという資料がありました。

 

電気料金は季節や地区でも異なるのですが、料金を比べるための
平均モデルというものがあります。

 

関東における、電力料金平均モデル による月額料金の推移を見ておきましょう。
データは毎月公開されていますので、それをもとに、グラフを作成しました。

 

 

ニュースでは5年ぶり高値と報道されましたが、
この平均モデルでは、その後も高値を伸ばしており、
まだまだ勢いが止まらない現在、
過去最高を記録するほどであることがわかります。

 

発電会社からの卸売価格ですが、2022年2-3月の卸売価格は、
1kWhあたり平均25円です.

 

しかし、電力は、生ものです。

 

電力の取引所(JEPX)というところで、株式のように取引されています。
ここでは、30分単位で48コマ(=24時間)分、必要な時間での先渡し取引がされます。

 

足りなくなると取引所で調達できるので、必要な時に必要なだけ購入できるんです。

 

当然ながら、長期契約時の価格より割高になります。
こういった市場を、スポット市場といいます。

 

ちょっと、公開資料から価格の時間推移を見てみましょう。
この価格は、新電力会社の調達価格ですから、末端価格ではないことにご注意ください。

 

 

ちょうど、電力の需要が大きそうな時間帯の価格が割高に、
需要が少ない時間帯は割安になっていますね。

 

需要の少ない時間帯は、ものすごく安くなっていますが、
今は春なので、暖房冷房が必要ない季節なので、
一日を通して需要が少ない時期なんです。

 

夏や冬は、この曲線が変わります。
新電力会社との契約の際、春のこうした曲線を見て、
市場連動型を選ぶと、電力価格が高騰した時には大変なことに
なります。

 

さて、日本の状況はわかったとして、それが国際価格と比べてどうなのかも
知っておかないと、日本が高いのか安いのか、正しい理解はできませんね。

 

そこで、諸外国と比べてみます。

 

調べてみると、なかなか、主要国を一同に比較したものが見当たらず、
少し古い資料ですが、2016年のものが見つかりました。
企業向けと家庭向けの体系が異なるのですが、ここでは家庭向けを掲載します。

 

 

2022年の国際比較をしたいのですから、
簡単に望む資料が出てこない以上、自分で推測することになります。

 

まずは米国を見てみます。
米国のニュースを調べると、電気料金が倍になったという極端なニュースも検索できます.

 

どの国も2016年から2020年までは、電気料金は大きな変化はありません。
2020年の電気料金も見ておきましょう。

 

 

データはOECDが世界に公開しているデータベースから情報を引いてきています。
2020年時点では日本の半額以下だったんですね。

 

仮に2022年の米国の電気料金が2020年の倍になっていたとしても、
2020年の日本と同じ価格に並んだにすぎません。

 

最初のグラフのとおり日本の価格は2020年よりだいぶ上がってしまったので、
2022年を比較する限り、米国の方が日本よりずいぶん安いことがわかります。

 

欧州は国ごとに発電のプラットホームが異なります。
例えば、細かく見ると、
フランスは7割が原子力、ポーランドは7割が石炭、ドイツは自然エネルギーが4割、
など、それぞれの国の特徴があって、欧州全部を一つの数字にするのは
難しいのですが、平均としてフランス・スペイン・イタリア・イギリスの
5か国をとったデータが情報ベンダーbloombergから4月4日にニュースされていました。

 

4月の卸売価格は、1MWh 300€です。
2021年は50€でしたから、6倍になっていますね。

 

欧州の、今の価格を日本と比較する為、同じ1kWh単位として日本円に直すと、

 

日本 25円
欧州(主要国平均) 41円 (1ユーロ=137円で計算)

 

となりました。

 

欧州の電力価格は、卸売段階では日本より 64%高いことになります。

 

つまり、電気料金は、国家としての平均的な価格で調べる限り、
欧州が一番高く、次いで日本、米国は一番安い、という結果です。

 

このように、少しwebで調べるだけで、望む事を調べたり、
あるいは推測することが簡単にできる、ということがわかりますね。

 

相場に関する色々な事項も、調べ始めてみると、
色々な’知らなかった事’が芋づる式に発見できます。

 

まずは、手を動かすことから、初めてみるのも良いものです。

 

こうした作業を時々行うことで、

 

おやっと思う発見、
さらに推し進めて 問題の提起、
それに対処する調査、
そして問題解決まで、

 

自己で完結できるようになります。

 

GWに、時間があれば、ぜひご自身の発見や疑問を調べてみてください。
こうした作業を繰り返すと、問題解決能力が増すこと、請け合いです。

 

このブログではみなさんの資産運用のお役に立てる情報として、
金融、為替(FX)関連のマーケット動向や予測なども随時配信していきますので
次回の記事もご期待下さいね。

 

では、また次回をお楽しみに!

 

 

マーケットの魔術師 奥村尚