投資家はどう行動し、何に、いつ投資するのが良いか
プロスペクト理論
「先が不確実な市場における意思決定」を伴うのが、投資です。
これを学問として、本格的に研究が始まったのは1960年代からのことです。
もちろん、それまでも、いろいろな研究はあったのですが、データ元が紙だったので
局所的で不正確であったり、頻繁な戦争などで市場が大きくゆがめられたり、
それ以前に、そもそも学会も立ち上がっていなかったりで、
正しいとか間違っているとかの追証ができなかったのです。
研究が始まり、それから10年くらい進んだ70年代には、すっかり証券市場の特性は
明確に示されるようになりました。
同時に、合理的に意思決定する場合と、そうでない場合の結果は
大きく差が出ることが示されたのです。
しかし、投資家は常に合理的に機械的な判断をできるわけではありません。
それがウィークポイントだったのです。
そして、1980年代から、そのウィークポイントにメスが入れられます。
ある心理学者が、“人間が示す行動と見通し”に関して解明を始めたのです。
その最初の論文が、プロスペクト理論(prospect theory)です。
この理論を提唱(1979年発表)したのは、
ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーという2人の心理学者です。
その後もさらに研究が進み、人間はなるべく堅実な方を選択(リスク回避)
することが実証されました。
この成果により、2002年にカーネマン氏は心理学者としては初めて
ノーベル経済学賞をとりました。
なるべく堅実な行動とはどういうものか
カーネマン氏により実証された、「人間はなるべく堅実な方を選択する」
という心理行動。
では、“なるべく堅実な行動”とは、具体的にどういったものなのでしょうか。
例えば、株式相場で、今1株100円(評価上)儲かっているとき、
まだまだ価格が上がると予想して、売却しない人がいるとします。
対照的に、同じ人が、今1株100円損しているときに、
これ以上下がると大変だと思い、損切をするようなケースも考えられます。
さらに具体的な例を挙げてみましょう。
例えば、1株100円ではなく、1000円(評価上)得した時。
ここから、もう1000円上げた場合、数学的な価値としては2倍になっているのですが、
この時点での、その人にとっての価値は2倍ではなく、1.5倍、1.6倍くらい
の感覚となります。
逆に大きく負けた人の価値を、この理論で説明するとこうなります。
最初のうちは、100ドル損した程度で、「大きく損した」と思っていた人も、
その額が1万ドルになった時、100ドル程度の損では“ヘでもなくなっている”のです。
要するに、金額が大きくなることで、その価値(損得の感覚)は麻痺する
ということです。
しかし、この理論を用いて
“では投資家はどう行動し、なにに、いつ投資するのが良いのか”
という答えは、まだ見つかっていません。
これは、まだまだ研究中の分野です。
しかし、人工知能を用いた投資においていえば、この理論は
人間を説得したり、投資をあおったり…
あるいは、なぐさめる癒しコンピュータとしてなら、
大いに役割があるかもしれませんね。
このブログではみなさんの資産運用のお役に立てる情報として、
金融、為替(FX)関連のマーケット動向や予測なども随時配信していきますので
次回の記事もご期待下さいね。
では、また次回をお楽しみに!
マーケットの魔術師 奥村尚
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