SWIFTからロシアが削除されたらガスと酒を交換する?
SWIFTの仕組みから考える
こんにちは、マーケットの魔術師 奥村尚です。
ここ数日、ロシアのウクライナへの侵略へのペナルティとして、
スイフトからロシアを排除、というキーワードが出てきました。
丁度良いので、スイフトの話題を掘り下げてみます。
スイフトは、SWIFTと書きますが、
Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication、の略です。
国際送金(外為の決済)や国際間清算をする際に、
例えば日本のJ銀行から独のG銀行へ送金する場合、
相互に口座を開設し合っていないので、直接送金ができません。
そこで、J銀行-中継銀行1-中継銀行2-G銀行
というように送金をします。
この時に使われるネットワークが、SWIFTです。
SWIFTに参加する銀行にはSWIFTコードという識別子が割り当てられるので、
まるで国内の銀行のように簡単に送金や決済ができるわけです。
中継銀行は、ドイツ銀行などグローバルな巨大銀行が担当します。
中継銀行の手数料が高いのですが、今のところ貿易で発生する
カネ(100万円以上)を海外送金するには他に手段がありません。
SWIFTから排除されたら、一体ロシアはどうなるでしょうか?
ロシアに海外送金する側がSWIFTコードでロシアの銀行を指定して送金したとたん、
a エラーとなって送金不可として返金されるか、
b 受付はされるが、ネットワークから排除されているので
処理がどこかの中継銀行で宙ぶらりんになったまま、お金は返ってこない
のどちらかです。
いずれにしても、ロシアで海外から送金されるカネを
受け取ることはできなくなります。
ロシア中央銀行は 6300億ドルの外貨を持っていますが、
ロシアから送金もできないのでドルも使えません。
キャッシュで受け渡しをしたらよいのでは?とう思う人もいそうですね。
流通するお札の中で最高額は100ドル(≒1万円としましょう)です。1gです。
1億円で10kgです。
10億円で100kgです。
100億円で1000Kg
うーん、重いですね。
結構な運搬コストがかかります。
運搬に何日もかかります。
泥棒の被害にも逢いやすいので保険代もかかるでしょう。
警備だって必要です。
非現実的です。
中国も、ロシアも、SWIFTと同じようなネットワークを国内で構築しています。
ロシアの銀行ネットワークSPFS、中国の銀行ネットワークCIPSという名称です。
しかしどちらも自国のみの銀行ネットワークなので海外送金には使えません。
日本のメガバンクも、同一銀行の外国支店間の送金では
自社ネットワークを構築していますが、
任意の国の任意の銀行口座へ送金する、という事は
SWIFTを使うしか解決法はないのです。
おそらく、中国とロシアの二国間の送金だけであれば、
中国のCIPSを使って決済可能です。
が、相互に為替レートを決めるのに、何を基準にするのかというと、
米ドルが使えない以上、決済の計算には金(Gold)を使う必要がありそうです。
送金側は自国通貨、受け取り側は金(Gold)で受け取る。
しかしルーブルも人民元も、金との交換が保障されていない通貨ですので、
運用上の難しさがあります。
Goldの代わりに仮想通貨を使う方法もありますが、やはり問題が発生します。
ロシアの貿易は輸出330億ドル(1割が中国)、輸入240億ドル(2割が中国).
つまり、ロシアは、中国に33億ドル輸出し、中国から48億ドル輸入しています。
時価総額が仮想通貨では最大のビットコインでも流動性や換金性に問題があり、
国家レベルでの貿易決済では使えません。
裏技ですが、ロシアも中国も米国債をたくさん持っているので、
それで支払うこともできるはずです。
しかし、米国債は米国の銀行が保護預かりをしており、
米国で国際緊急経済権限法(IEEPA)が発動されると外国政府は売却できません。
米政府が米国債の換金をコントロールできるようになっているんです。
この裏技も使えそうにありませんね。
残るは、相互に人民元とルーブルを支払いあう、という決済ですが、
ルーブルの価値は今後ズンズン下落すると考えると
中国に不利なのでやはり難しいですね。
こんな事は可能かもしれません。
ロシアは天然ガスを販売し、その代金を紹興酒で受け取る。
最も現実的なのは、原始的な物々交換なのかもしれません。
このブログではみなさんの資産運用のお役に立てる情報として、
金融、為替(FX)関連のマーケット動向や予測なども随時配信していきますので
次回の記事もご期待下さいね。
では、また次回をお楽しみに!
マーケットの魔術師 奥村尚
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