日本市場は成長?衰退?

株価指数のトリック

 

こんにちは、マーケットの魔術師 奥村尚です。

 

昭和のバブル期1989年の年末、日経平均は約38,877円(円単位四捨五入)をつけました。
この時の日経平均が、引け値ベースでは最高値です。
2021年5月末日の日経平均は28860円でした。

 

さて、同じ日のTOPIXはどうだったでしょう。

 

1989年末、TOPIXは2881でした。2021年5月末は、1923です。
おかしなことに気が付くはずです。
日経平均はバブルのピーク時の74%弱まで回復しているのに、TOPIXは66%しか回復していないのです。

 

 

TOPIXは、東証1部の全銘柄を対象に時価総額を計算し、その総和を指数化しています。
1968年1月4日の時価総額100としているので、計算上は、

 

今の東証一部の時価総額 ÷ 1968年の時価総額 x 100 で計算できます。

 

1989年末の東証1部時価総額は、591兆円でした。
2021年5月末の東証1部時価総額は、714兆円でした(小数点四捨五入)。

 

おや、時価総額は既にバブル時のピークを抜いているんですね。

 

とすると、本来のTOPIXは、バブル時の値を超えているはずです。

 

1989年と同じ計算を行うと、5月末のTOPIXの値は3480 になります。

 

でも、東証が発表しているTOPIXは1923です。

 

実に、45%も減っていることになります。

 

一体、なぜ減っているのでしょう。

 

答えは、東証がTOPIXのために計算する時価総額は、時価総額の合計ではない
ということになります。

 

弊社で使っている投資塾のテキストから、該当部分のグラフを抜き出してみました。

 

 

日本企業は、関連企業、グループ企業という仲間の企業の株式をそれぞれ持ち合っています。

 

英語ではクロスホールディングといいますが、お互いがお互いの株式を持ち合うことによって、
関係を強固なものにするとともに、外部の無関係な会社からの買収を防ぐ、という役割も持っています。

 

一方、こうした株式は、いったん保有されてしまうと、
市場で売却されることはありません。
金庫にしまわれて決して流通することはないのです。
金庫株ともいいます。

 

市場に出ない以上、絶対に売買されないのですから、クロスホールドされた金庫株の価値はない、
とする考えで、その分を除去して東証はTOPIXのための時価総額を計算しています。

 

こうしたTOPIXの計算ルールは、1999年以降に導入されたもので、その後も何度か修正されています。

 

ということは、1999年より前と1999年より後のTOPIXは、連続性に欠けている
ということにもならないのか? と疑問も出ますよね。

 

はい、その通りです。

 

ルールが異なる計算方法なので、
今のTOPIXと昔のTOPIXは比較してはいけない、のですね。

 

東証の時価総額は、昭和のバブル期をずっと上回っており、
日本企業は市場全体としてみると、ちゃんと成長している
、ということになります。

 

このブログではみなさんの資産運用のお役に立てる情報として、
金融、為替(FX)関連のマーケット動向や予測なども随時配信していきますので
次回の記事もご期待下さいね。

 

 

では、また次回をお楽しみに!

 

 

マーケットの魔術師 奥村尚